「待てない犬」でもいいじゃないというコンセプトを打ち出した斬新な広告手法
犬をしつける際には「お座り」「待て」などと言いますが、このたび「待てない犬」を前面に押し出したドッグフードの広告が登場しました。
一般的なイメージを逆手にとって、注目を集める手法と言えますが、一方で、「『待て』は苦手でもかわいい犬」を飼っている飼い主からの共感を集めているのではないでしょうか。
出典:祝ハチ公生誕100年。忠犬も待てない!「ココグルメ」を食べたすぎて待てないワンちゃんたちがJR渋谷駅ハチ公改札前に大集合
魅力は“消費者”視点をズラすこと
この広告は、犬の食べっぷりの良さを食べたくて待ちきれない犬の写真を使って、「忠犬も待てないココグルメ」というキャッチコピーとともに表現したのです。
普通の広告の場合には、当然、広告の対象となる消費者の目線で広告を出します。
ペットフードの場合にも同様で、ペットフードの購入者となる飼い主を「消費者」とみなして、ペットの健康面や安全性に訴求するのが一般的です。
なぜなら、飼い主自身はそのフードを食べないため、フードのおいしさを伝えても伝わらないと考えられるからです。
株式会社バイオフィリアが提供するドッグフード「ココグルメ」は、そんな常識を超えて、あえて「おいしさ」を打ち出すことに挑戦しました。
ペットフードの広告においても、あえて、ストレートに「消費者」目線に沿った、ペットに向けた広告を作ったのです。
その結果、ペットにおいしさを伝えることになり、訴求として面白い内容になりました。
飼い主に忠実な犬の代名詞「忠犬ハチ公」のイメージも活用
「忠犬も待てないココグルメ」の大型広告は、JR渋谷駅ハチ公口に掲載されました。
ペットフードを前にして、待てなくて動いてしまった様子は、写真のブレが表しています。
さらに、全国のココグルメユーザーの犬たちの待てない様子を写した写真が42枚添えられています。
しかも、広告が掲載された2023年は、ハチ公生誕100年の記念すべき年でした。
飼い主に忠実な犬の代名詞「忠犬ハチ公」のイメージも活用した、犬好きに訴えかけるメッセージだったと言えるでしょう。
最大の魅力は犬を飼うことの楽しさが感じられること
福井県の行った「景観と屋外広告物に関するアンケート調査結果」によると、景観を乱す広告が嫌われていることがわかりました。
「忠犬も待てないココグルメ」の大型広告の場合は、JR渋谷駅ハチ公口という、犬と深い関わりがあり、景観を乱すことのない場所に掲載されました。
むしろ、ハチ公口という場所と、広告の発するメッセージがうまくリンクして、駅利用者に喜ばれたのではないでしょうか。
また、ココグルメの広告のコンセプトは、ドッグフードのおいしさを伝えることですが、この広告からはもう1つのメッセージが伝わってきます。
「フードを目の前にして、待てない犬であってもいいよ」という飼い主目線の感情を肯定することによって、広告の背景に犬を飼うことの楽しさも滲み出ているのではないかと考えられます。
飼い主に訴えかけるペットフードの広告という特異性を逆に利用して、そのおいしさだけではなく、ペットを飼うことの喜びを表現しています。
広告を通じて企業としての「犬への愛」が感じられたことも、この広告が成功したポイントの1つではないでしょうか。