【見える化】暗黙知を形式知に変えるナレッジマネジメント
少なからず会社が存続している限り、会社の中にはノウハウや知見が存在しているはずです。
ところが、意外とこれってノウハウなのか?と悩ましいのもまた事実。
この記事では、暗黙知を形式知に変えていくための方法を実務ベースで解説します。
- 「暗黙知」とは、“言語化や図示できておらず、人に依存する知識のこと”
- 「形式知」とは、“組織の中で共有済であり、人に依存しない知識のこと”
詳細は「暗黙知は「隠れたノウハウ」、形式知は見える形になった「ノウハウ」のこと」をご覧ください。
- 「SECI(セキ)モデル」とは、“暗黙知を形式知へと変えるプロセスを可視化したモデル”
- SECIモデルは「ナレッジ(=知識・ノウハウ)マネジメント(管理)」の基礎
- 多くのナレッジマネジメントツールの原点にもなっている
詳細は「暗黙知を形式知に変える:SECIモデル例-ナレッジマネジメントの基礎」をご覧ください。
- ベストプラクティス共有型
- 経営資本・戦略策定型
- 専門知識共有型
- 顧客知識共有型
詳細は「形式知化のパターンは大きく4つに分類される:ベストプラクティスが取り組みやすい」をご覧ください。
暗黙知は「隠れたノウハウ」、形式知は見える形になった「ノウハウ」のこと
暗黙知と形式知の定義は下記のとおりです。
- 暗黙知
言語化や図示できておらず、人に依存する知識のこと - 形式知
組織の中で共有済であり、人に依存しない知識のこと
意味は漢字のママに、暗黙知は「暗黙」なので形になっていないもの。
形式は形になっているものと理解すると分かりやすいです。
暗黙知と形式知の例
暗黙知の例 | 形式知の例 |
---|---|
・自分の頭の中にしかないノウハウ ・知見 ・自分だけが知っているやり方 ・他メンバーは知らない業務効率化の方法や判断基準 | ・社内マニュアル ・フロー表 ・noteやオウンドメディアでの技術ブログ ・SFA/CRM/MAツールなどの折衝記録 |
無形商材を販売する会社ほど必須になる「ノウハウの見える化」
自社のノウハウは無形商材を販売する会社ほど重要な一方で、適切に扱わないと暗黙知化する可能性が高いものです。
一言で言えば、形式知化しないほうがメリットが大きいのが、無形商材の従業員だからです。
- 部署内での競合優位性になるため
- 自身のバリューは知識量×使用ケースで決まることが多いため
- 自身が独立する際に使用しやすいため
- 現在の独占的地位を守りやすいため
営業会社やコンサル会社においてこのような傾向が起きやすいとされています。
この事態を収拾させるためには、正しく評価制度を設定する必要があります。
一方で形式知を作る仕組みが出来上がると、無形商材の会社はその知見を多くのプロモーションに活用できます。
例えば、Web広告やオウンドメディア、ホワイトペーパーの作成、セミナーなど、多くの手段に活用できることでしょう。
また、ノウハウの共有は新人の教育・育成や、業務効率化にも役立ちます。
まとめると、無形商材の企業こそ、自社の暗黙知を明文化することは多くの場合メリットしかないということです。
暗黙知を形式知に変える:SECIモデル例-ナレッジマネジメントの基礎
SECI(セキ)モデルとは、野中 郁次郎 氏(一橋大学名誉教授)が提唱した、暗黙知を形式知へと変えるプロセスを可視化したモデルです。
ここでは分かりやすいように、新人コンサルタントが暗黙知を形式知に変えていくプロセスを例に出します。
SECIモデルイメージ
- 共同化
新人コンサルタントが先輩コンサルタントから学ぶ。実践する。 - 表出化
新人コンサルタントが上司に成果報告。
マニュアル化なども表出化に該当する。
上司からも過去の経験に基づくアドバイスなどの形式知が発生。 - 結合化
新人コンサルタントが上司からのアドバイスを元に、新たな知識を獲得。 - 内面化
新人コンサルタントが、結合化した知識を自分のモノにする。
無意識下に実践することで、少しずつ当たり前になり、暗黙知化していく。
この暗黙知を形式知に変えるプロセスは、「ナレッジ(=知識・ノウハウ)マネジメント(管理)」の基礎として、多くのナレッジマネジメントツールの原点になっています。
実務的にはなかなか難しいナレッジマネジメント
SECIモデルでは、アウトプットの場が存在することが前提になります。
例えば、共同化の場合には「アイデアコンテスト/ OJTオフィス/休憩スペース」。
表出化の場合には「職場/会議室/オンラインミーティング」。
結合化プロセスの場には「ナレッジマネジメントツール/EXCEL」などが該当します。
すなわち、どこかに情報が残り、誰かが記録しない限り、形式知にはなりません。
また、そもそも何が暗黙知なのか、という議論も分かりづらくなってしまっているのもよくあることです。
例えば、営業をする際には「相手の立場に立って営業をする」「ネクストアクションを握る」などはネットで調べて出てくる情報であり、これを形式知化する必要があるかは、判断に困るところでしょう。
従って、ツールさえあればすぐにチャレンジできることではなく、従業員の規模が大きくなればなるほど、チャレンジしづらくなるのがネックです。
形式知化のパターンは大きく4つに分類される:ベストプラクティスが取り組みやすい
形式知化=ナレッジマネジメントの進め方は大きく上記の4つに分かれます。
今までほぼナレッジマネジメントにチャレンジしたことがない方は、まずはベストプラクティス共有型からチャレンジしてみるとよいでしょう。
ベストプラクティス共有型は過去の成功体験をナレッジツールにまとめればいいため、組織全体のスキルが上がりやすいのがメリットです。
暗黙知を形式知に変えるための3つの課題と解決策
暗黙知を形式知に変えるためには、あるべき姿と現状整理が必要です。
- あるべき姿
企業にノウハウが溜まり、社員に属人化しない状態 - 現状
一部の優秀な社員のみに知識が偏ってしまい、社員に忖度しなければままならない状態 - 課題
- 従業員がベストプラクティス共有をしやすい状況を作る
- 共有自体がメリットになる状態を構築する
- 形式知を実現するためのツールを導入する
はじめてナレッジマネジメントに取り組む場合には、上記の課題が考えられます。
それぞれの打ち手を考えてみましょう。
1.従業員がベストプラクティスを共有をしやすい状況を作る
従業員にとってメリットがなければ、ベストプラクティスを共有することはありません。
実務的に、暗黙知を形式知にすることは手間しかなく、多くの場合評価されないからです。
ところが「インタビュー記事を作成する」などであればメリットが重なることがあります。
従業員自身がインタビュイーになることで、その事例を見た顧客からの指名検索が見込まれるからです。
管理部門の従業員も入れて対応することで、社外向け・社内向け両方のコンテンツを作成できるので、知見が溜まり、外部向けのコンテンツとしても活用できるようになります。
2.共有自体がメリットになる状態を構築する
形式知にすること自体が大きなメリットになるような状態とは、形式知を用意することが自身の評価につながる状態を指します。
具体的には、役職付きの社員の評価をチーム評価にする。
ナレッジの共有自体がポイントになるような追加の制度を導入することが検討できます。
3.形式知を実現するためのツールを導入する
最終的に形式知は、いつでも必要な人が見れる状態にしなければ意味がありません。
このためには社内Wikiなどにまとめるといった作業が必要不可欠になります。
例えば、当社では「NotePM」というクラウドサービスを使用して、形式知を後から検索できるようにしています。
そもそも自社の暗黙知が分からない場合の調査方法
自社の暗黙知が分からないといった声はよく耳にします。
自社にとって一般的であったとしても、他社にとってはとても学びになる、ということはよくあります。
他者に新しい気付きを与えられるのであれば、それはノウハウ=暗黙知であると考えられます。
暗黙知の調査には競合調査から始めてみるのがおすすめです。
例えば、サービスの口コミを集積し、形容詞だけ引っ張ってみると「安心」「安全」などのキーワードが競合から抽出されるかもしれません。
一方で自社の立ち位置が「革新性」であるのであれば、その会社とは何が違うのかを考えることが自社の暗黙知の可視化に役立ちます。
競合があって、自社の立ち位置が分かることはよくあります。
例えば、弊社では、自社ブランディングの調査を、定量項目と定性項目を組み合わせて調査します。
大きな金額をかけるのではなく、最低限の金額感から始めてみることが、自社のベストプラクティスの発見に役立ちます。
弊社では自社の強み・弱みを導き出すノウハウマップというものを使用して、形式知を導き出します。
形式知はマーケティングに活かせるとベスト
形式知はコンテンツマーケティングに役立てられます。
例えば、オウンドメディアの運営です。
生成AIなどで記事が制作される中で、独自性が今後のポイントになってきます。
自社の形式知を言語化することで、上位表示が見込まれることもあるでしょう。
また、形式知が見えてくることで、導入事例のホワイトペーパーや、簡単なノウハウ資料のホワイトペーパーも作成可能です。
自社で作成するのが難しい場合であっても、伴走型のサービスを活用することで、自社のリードを集める資料となることでしょう。